2018.04
うたらばvol.21【時間】 30首
(写真作品)

時刻表の余白の広さ 両腕を広げてふるさとの道を行く(楓子)

時間割の教科を動かしていって4つ揃えば消せるんじゃない?(橙田千尋)

待ち合わせ時間に二度と遅れないために一緒に暮らしませんか(関根裕治)

新入りの目覚まし時計は先輩に気を遣ってか数秒遅れる(谷口泰星)

時間よ、と優しい声に諭されて遊びをやめるように死にたい(西村曜)

春のなか水晶時計の刻みゆく小さな音をつれて歩いた(吉川みほ)

深夜二時ねむれないまま脳内の木には羊が咲きほこってる(千原こはぎ)

「うらやましかった。(かった、が言える日が来てしまったか)生、もうひとつ」(山田水玉)

四十六億年の時間を共にする価値があったか教えてよ月(真雪)

殺す時、殺される時が重なってふと目を逸らす魚捌く時(chari)

(佳作集作品)

「少しだけ遅れるね」って君からのメールを何度も見る待ち時間(あひるだんさー)

あけおめをクラブで過ごすあの子から元日に届く手書き年賀(麻数)

砂時計の砂じゃないとこで残り時間はかってそうなひとのはげまし(御殿山みなみ)

放課後の吹奏楽部のスイングに歩調をさらわれながら帰ろう(久永草太)

でも俺はグリーンがいいな、戦隊の。仕事はするが定時で帰る(西村曜)

「おおこれは時間を超越したようなワイン」の味を聞きたいのだが(佐々木敦史)

老いるとは母に似ること春の夜のをはることなきひとりあやとり(太田宣子)

きみがいつも猫を追うからデートにも適用すべきアディショナルタイム(ともえ夕夏)

未来さへなつかしくなるゆふぐれの雪平鍋に煮えてゆく鱈(有村桔梗)

ドッキリを仕掛けられたと気づくまでの時間のような人生だった(サラダビートル)

モスキート音はいつしか聞こえにくくなり耳の奥から人は寂びゆく(高松紗都子)

どの部屋の時計も少しズレているズレているのが個性のように(織部 壮)

ラーメンにお湯を注いでキスをするあぁなんて有意義な三分(風花 雫)

軽々とわたしの歳を超えてゆく黒猫の背にひだまりはある(小山美由紀)

片付けの途中でひらくアルバムに巻き戻されている日曜日(香村かな)

薄味の君の煮物に馴染むころ愛の言葉を言わなくなりぬ(藤 かづえ)

今日もまた起きる時間に目覚ましが鳴るから続く幸せもある(幸香)

外灯は緑黄色に照らしつけ世界に満ちるβ-カロチン(新道拓明)

ザクザクと白菜を切る。5秒間自分を出来る女と思う(堀眞希)

年輪の同心円に目を回し蜻蛉が少し軌道を曲げる(涸れ井戸)

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門限を破ろうなんて冒険を笑うふたりに吹く春あらし(田中ましろ)