2018.01
うたらばvol.20【些細】 30首
(写真作品)

初めての顔をして聞く前よりも少し膨らんでいる話を(風花 雫)

この謎に迫る小さな好奇心ティッシュ一箱出しつくし、尚(外川菊絵)

とじた眼が光を甘受するように迷いのなかを生きてゆきたい(高松紗都子)

集まれば小さな悩み事だって私を殺すこともできるよ(美野優枝)

一行の空でありまた海であるささやかなうた 鳩に教えた(吉川みほ)

夜の足音と思えば秒針はわたしに迫るように響いて(七波)

しあはせのジンクスとして雨の日に左足から履くスニーカー(有村桔梗)

一円を笑う者は一円に泣くあなたを笑う者はみな泣け(関根裕治)

おふとんの中でホタルになるようなあなたと交わすことばのすべて(伊波 慧)

窓際の席で見下ろす人波の一人一人に名があるなんて(佐倉麻里子)

(佳作集作品)

夏と冬のつなぎのような町の秋 シャワーが1℃温かくなる(夏雪)

ありふれた春ありふれてゐない春にんじんスープの赤に占ふ(太田宣子)

Friendのiがないので×にする思い直して△にする(佐々木敦史)

三年目あなたが初めてゴミ出しを忘れて結婚することにした(拝田啓佑)

涙ぐむ嫁を見ていて涙ぐむお遊戯会の息子の台詞(和泉明宏)

昨日より目玉焼きの形がいいと気づいてくれる人との暮らし(ひの夕雅)

火を止める前に祈ったほうがいい愛は細部に宿ると言うよ(山田水玉)

602ページが死因 もの言わぬ紙魚の些細な生涯のあと(黒川鮪)

君からの手紙をちぎる要領でちぎった今朝のほろ苦きレタス(田巻由美子)

会計が776円で世界は俺を見放している(飯田和馬)

合計が777円でぴこんと跳ねるおじさんの眉(氷吹けい)

誤字だけどそれは平和な国だろう地図に書かれたバカチン市国(関根裕治)

「いつまでもいっしょに遺体」の変換にそれもいいなとちょっとおもった(西村曜)

感覚はみんな微妙にちがうからたくさん目盛りをもつウォシュレット(もなか)

些細なことなんかじゃないわ擦れ違う女のひとを振り向かないで(酒井あんな)

慣れだって言えばそうだし最近じゃ「好き」とちっとも言ってくれない(加治小雨)

守備力が1だけ上がる思い出に何度も助けられてきました(宇野なずき)

文豪に些細な髭を生やしつつ授業は過ぎて行き場もなくて(なぎさらさ)

名前でもねえでもあ、でも振り向いて呼び方なんて些細なことば(多田なの)

目ざわりな星をいくつか吹き消して静かの海の神の午睡は(ユキノ進)

 *

深海に降る雪のよう君とした約束をまだ覚えています(田中ましろ)