2017.09
うたらばvol.19【箱】 30首
(写真作品)

宝箱開けるみたいに笑うからあなたの春がわたしにも降る(長月優)

サイダーを箱詰めにする瓶と瓶ぶつかりあって夏がうまれた(城崎むり)

チョコレート食べ尽くしても残り香が漂うようにあなたがいない(山田水玉)

やわらかなパルプは眠る青色の牛乳パックだった春の日(新名リオ)

箱詰めの林檎の一つ、そのひとつにも優しげな故郷のあること(楓子)

鳥のない巣箱を花でみたしてもさみしい 君は君でしかない(伊波 慧)

教室はふた付きの箱その中の小さじ一杯分の死にたさ(ひの夕雅)

春風やときに雷雨があることをピアノを鳴らすように触れてよ(琴平葉一)

おととしの春の匂いを閉じ込めた箱を未だにあずかってます(小泉夜雨)

家具がふえ家族がふえて真四角の部屋だんだんと丸みをおびる(もなか)


(佳作集作品)

からつぽの弁当箱が積み上がるああ母親といふは僥倖(太田宣子)

夏にゆく風が吹きこむ靴箱でサンダルたちが歩きだしそう(月丘ナイル)

例えれば箱にはいって胴体を切断されるくらいの美人(山口正剛)

ダンボール箱を鎧として着てた五歳の俺のピースサインよ(大橋春人)

元気ならいいんだそれで、にやついて グリコの箱の中を覗いた(吉沢湊)

白菊に囲まれ眠る足先の板のささくれ取ってやる母(小島早貴)

ひとの名をひとつ飲みこむぬばたまの投票箱のなかのしづけさ(有村桔梗)

怪獣もヒーローもみんな同じ家帰りましょうねまた遊ぼうね (西淳子)

amazonで売って生活できそうなくらい溜まったamazonの箱(池田佳)

群衆についていけずに立ち止まりボックスステップを踏む人たち(Y川)

春先の箱のティッシュの勢いでたちまち減ってしまう愛情(えんどうけいこ)

やわらかく誰かの蓋となるためにこうも四角いのねハンカチは(真倉葵)

音楽が流れて猫が自分から箱を出てくる粋なサービス(衣未(みみ))

売り物のゴミ箱に「※注 ゴミを捨てないで ゴミ箱ではありません」(関根裕治)

名前くらい書いておいてよ箪笥から不意にあらわる臍の緒の箱(氷吹けい)

米櫃のブリキの箱が傾いていつかの波の音がこぼれる(吉川みほ)

猫用のベッドが届いたダンボール箱で今夜も眠る愛猫(風花 雫)

ケーキ屋の箱の半端な空間に詰められているこれは春です(小山美由紀)

思い出の詰め合わせみたいな箱をゆっくり作る引越し前夜(宇野なずき)

新宿でロマンスカーに乗り込んで箱根よ私に近づいてこい(小林礼歩)

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飛び込まずにはいられない眩しさで僕を幽閉する君の檻(田中ましろ)