2016.12
うたらばvol.17【秘密】 30首
(イラスト作品)

秘密基地とよぶにはちょっとオープンでどんぐり持って先生も来る (西村曜)

おんなじに作っていてもおんなじにならない卵焼きの味とか(有村桔梗)

鳥が啼く人には解けぬ暗号で風に悩みを打ち明けながら(関根裕治)

引力で下がった頬が目立たない姿勢で王子待つ眠り姫(凪 ひと葉)

酔っていたので覚えてないが翌朝の鞄になにかの骨を見つける(ユキノ進)

木漏れ日のような確信 父母に生涯秘めることもあること(山田水玉)

さん付けで呼ぶ君の名を呼び捨てで呼ぶため猫と暮らしています(風花 雫)

永遠に僕が鬼です夕暮れに気付かれぬよう君の影踏む(鳩子)

悪の秘密結社に内定が決まって親から全身タイツを貰う(宇野なずき)

秋がくる 床屋の椅子に重大な秘密があってほしいと思う(工藤吉生)


(佳作集作品)

夕焼けが世界を秘密基地にする どこで生きても僕の生き方(太田宣子)

生真面目な祖母の秘密が天国で祖父にばれないようにと祈る(ひの夕雅)

夜の海みたいな目をした叔父さんとナイショで食べたアイスクリーム(藤田一六)

また君に伝えそびれた数々の言葉が歌になる夏未明(七波)

深爪の君のささくれじっと見て私うっすら嫉妬している(蜂谷ようか)

ラブホテル街への坂に点々と脱ぎ捨てられている化けの皮(木下龍也)

レジ袋帰る道みちふくらませ風を買ったと笑うおとうと(西村曜)

ためらわず海へさらえる友だけに風になったと告げる土曜日(秋本こゆび)

5歳児とないしょばなしをしていれば子どもに戻る17歳児(稲垣三鷹)

胸のうちにずっと少女がいることに気づいて今日は声を知りたい(高松紗都子)

瀬戸際で無口なひとは切り札を隠し持ってるような気がする(香村かな)

ともすれば解りあえない偽りも 二人で築くこの砂の城(ひらだいら へいべえ)

おそらくはこひびとよりも親よりもわたしの趣味を知つてゐる司書(有村桔梗)

冷蔵庫奥のちいさなジャムの壜みたいに秘めた約束だった(千原こはぎ)

パチンコの横に景品交換所。社会の秘密は概して露骨(飯田和馬)

いい人は父以外にもいたと言い秘密を抱き眠る母親(七波)

共犯のきみは涼しい顔をしてエレベーターに乗り込んでくる(姉野もね)

どうしても共有したくてつまらない過去を秘密として練り上げた(とき)

一面にシロツメグサは広がって秘密を探すいのちでいっぱい(藤 かづえ)

日記には書けないことがスケジュール帳のページにひっそり暮らす(かしくら ゆう)

 *

夕暮れのにおいをさせて引き出しの奥にいつかの君の丸文字(田中ましろ)