2015.11
うたらばvol.14【街】 30首
(写真作品)

故郷でも新天地でもない街でそれでもわたしにドラマが起きる(稲垣三鷹)

休日のオフィス街にて縮まった距離をどうしますか、係長(氷吹けい)

からす、からす、歓楽街を飛び去ってわたしも海をめざしてみたい(柴田葵)

電子回路基板はやっぱ街だよね この赤いのに君は住んでる(土井礼一郎)

守られてよかったのにね新宿は豪雨あたしはまた傘を買う(山田水玉)

君が生まれた街だと気づき一瞬でやわらかくなる車窓の緑(香村かな)

自転車の鍵をなくして帰り道 理想のタイプの雄猫に出会う(ひの夕雅)

あをぞらに腕を伸ばせば伸ばすほどまつさかさまに沈みゆく街(飯田彩乃)

街中をくまなく探してみたけれど脇役なんていないじゃないか(やじこ)

「街がえて送信しちゃったごめんね」と間違えている君に住みたい(宇野なずき)


(佳作集作品)

誰ひとり知らない街の真ん中にきみによく似たシマウマがいる(杏野カヨ)

ミニチュアの街にもいつか日が昇るようにと埋めたひまわりの種(関根裕治)

顔のあるわたしを照らす街灯がのっぺらぼうの影を生み出す(荻森美帆)

もうきみのものではないということを始める知らない名前の駅で(千原こはぎ)

時計台の下で会おうね 日没がはやまることをちゃんと嘆いて(こゆり)

100km/hに耐えられたなら何処へでも連れてってやる、名も知らぬ虫(ジョン・ドゥ)

敵が来た!女、子供はこの奥へ!と言う間もなくて殺される蟻(飯田和馬)

各区画をファミリーマートに占拠されこの街がもうコンビニエンス(龍翔)

ガラス越し街を眺めるひとときを読点としてドトールにいる(風花 雫)

脚韻を踏むように降る雨のなか淡く浮き立つ春のローファー(高松紗都子)

この街の梅雨が楽しくなるように 地図に印した紫陽花散布図(もこもこ)

幸福の相合傘を探しては神様が街に雨を降らせる(阿南周平)

ビル街のすべての窓が満月を抱いている誰かの誕生日(鈴木晴香)

合併に消えてしまった町名で今もよんでるふるさとの道(春森糸憂)

迷いこむ街の小路のどこかには猫が湧き出す一点がある(有村桔梗)

降りるとき車内に忘れた携帯が遠い街まで旅をしてきた(金井 告)

自由とは何かを問うて行き過ぎるポメラニアンの真紅のリード(鳩子)

関係を切りたいのなら鋏ではなくて切符をそのポケットに(木下龍也)

君がまだ来たことのないこの街に今年二度目の台風が来る(泳二)

街路樹も名を掲げるのにこの街で誰も私の名前を知らない(とき)

 *

オレンジがお疲れさまの色としてひとしく街に降りそそぐ五時(田中ましろ)