2015.07
うたらばvol.13【花】 30首
(写真作品)

咲きたくて散りたくてまたひとくちの水を飲みこむ四月の窓辺(高松紗都子)

花の名が次々呼ばれ駆けてゆくスカートゆらし咲け、姉妹たち(稲垣三鷹)

生きること忘れることのバランスがまだ取れなくて抱いている花(円)

本物の薔薇で入浴してみたらなんか詰まったセレブもつらい(猫丸頬子)

ならいらない永遠なんて 咲きながら死んでゆくプリザーブドフラワー(姉野もね)

綴るほど日記のページは重ねられわたしの過去を押し花にする(雪村遙)

花を食べ火の玉を投げ亀殺すあぶないやつが姫に近づく(関根裕治)

桜のころ通りたくなる道があり毎年春になるまで生きる(あみー)

紫陽花の花は花びらではないし愛人の愛も愛ではなくて(柴田葵)

花瓶 その花の終わりにふさわしくまたうつくしいお墓でしたね(木下龍也)


(佳作集作品)

飛んできた綿毛に誰も気づかないまま教室に春が住みつく(やじこ)

銃口に花を ぼくらは勝ったのか負けたのかすらわからずにいる(木下龍也)

おしべから蜂が未来を選びとる花びらの散るまでのつかのま(雪村遙)

閉じられた本の付箋のいくつかがあなたの中で花を持つ種子(文月郁葉)

花びらがあなたをさらう季節ならもう四月などこなくてもいい(こころ)

いっせいに首を振りだす秋桜が君の返事を告げる夕暮れ(ヒヨワくん)

亡き母の愛した庭を手入れする慣れぬ手つきの父に来る春(羽島かよ子)

ヒヤシンス青に染まってカーテンの閉じた教室にも空がある(荻森美帆)

もう恋は終えたのでしょう花束が自らの死に気付いたみたい(chari)

爪先に花をともして受付の女の人は散りやすい種だ(外川菊絵)

風を抱く枝垂れ桜に背を押されいち、にい、さんで手をつなぎます(月丘ナイル)

花のないサボテンを買う最初から期待しないという予防線(香村かな)

花束を持って誰かを待つ人に花瓶を持った人が駆け寄る(ひつじのあゆみ)

時々は昼間に星を眺めたいぐいっと空にかざすタンポポ(佐倉まり子)

おはようとおやすみを言うためだけに窓辺に飾る一輪の花(山本左足)

「花丸をつける右手にふれたくて教官室に行きました、まる」(新名リオ)

水仙の島に降り立つ五歳児の靴が生み出す春のよろこび(大木はち)

たんぽぽの綿毛は宇宙に飛び出して見知らぬ星で花の祖となる(土屋智弘)

花柄の傘をさしたら灰色の世界でわたしだけいいにおい(嶋田さくらこ)

のぞきこむ八時のさくら保育園 ちいさい僕が泣いてるようで(有村桔梗)

 *

切っ先に誰の心を宿らせてわたしの指を刺したか 薔薇よ(田中ましろ)