2015.02
うたらばvol.12【バランス】 30首
(写真作品)

切りすぎた前髪もまたかわいいと言われる程度の切りすぎを狙う(きつね)

友情のおわりを告げる音はなくだれかが触れたトライアングル(琴平葉一)

深呼吸したい週末 君が描く絵は空だけがやけに広くて(香村かな)

引き寄せる力と遠くなる力 ひとつだけ月を持つさびしさよ(ユキノ進)

泣くことと笑うこととの肉薄を知った記念のチキンラーメン(山田水玉)

好きな人の好きな人の好きな人が僕らしいので丸く収まる(六条くるる)

片側に力士ばかりを集めるとうまく飛べないことがあります(やじこ)

繋がれた糸の強度を知りたくて僕らはわざと真逆を選ぶ(鳩子)

ひとことで壊れてしまう関係に重心のせる前でよかった(原田彩加)

自転車に乗れない春はもう来ない乗らない春を重ねるだけだ(木下龍也)


(佳作集作品)

天秤にかけられている春キャベツだらけの海にあのひとがいて(藤本玲未)

待たされるのはいつもぼく 右足の靴底だけがはやく磨り減る(龍翔)

補助輪を外して三日目の恋はふらつきながら走り始める(泳二)

ビー玉を落とせば転がるような家ゆるやかな坂の下でお別れ(ぞね)

ブランコの最大高度で手を離す君の無謀を愛す八月(鳩子)

駆けまわる生徒をお盆の上に載せ崩さないのが教師の腕だ(chari)

両腕を広げて歩く きみはいつも高いところでバランスをとる(飯田彩乃)

星々の美しい調和のためにどろぼう猫の幸せ祈る(姉野もね)

座布団の飛ぶ春の宵かなしみは負けてはならぬものにこそある(高松紗都子)

しあわせな日々と書かれたラベルだけ余っているのでもらってきたよ(実山咲千花)

こっち側来ちゃだめだって言われてもたまには揺らしたい観覧車(嶋田さくらこ)

一輪車に乘ったあの子の前髪が私のと違う揺れ方をする(黒夜行)

千年のバオバブついに倒れゆく愛のバランス崩した星に(うらら)

パンプスのヒールを削るようにしてもうここからはひとりで行くね(空木アヅ)

不定期に茶色ばかりの食卓があり白飯の尊い光(佐倉まり子)

右左合わない翼を持つ国が飛べない鳥に分類される(阿南周平)

バランスの取れた食事をするために一日三食ジャイロスコープ(宇野なずき)

出すぎたり少し下がりすぎてたり女という字はうまく書けない(田中りょう)

家出した君の残したこの積み木崩せないまま地球はまわる(牟礼鯨)

すこしだけ左に傾いたままのきみの背骨を数えて眠る(有村桔梗)

 *

分け隔てなく愛される嬰児にモビールまわれ春のリビング(田中ましろ)