2014.10
うたらばvol.11【家族】 30首
(写真作品)

柔軟に生きる強さよ祖父好みになんでも甘く煮てあげる祖母(佐倉まり子)

いつまでも生まれ来ぬ子を愛おしむ 優先席のピクトグラムは(稲垣 三鷹)

団らんの定義を書きかえるために今日は家族で王将へ行く(泳二)

永遠にこの部屋の名は子ども部屋同じ角度で夕陽が差し込む(とき)

おそろいのタオルケットを持ち寄って眠れば似ていなくても姉妹(嶋田さくらこ)

妹という生き物は愛されるために生まれる 七月の雲(久米島)

「おてつだいけん」を財布に忍ばせて残業用のコーヒーを買う(氷吹けい)

乾杯と叫んでしまったじいちゃんを囲んで喪服に広がる笑い(倉野いち)

女子アナの服装チェックは欠かさない 息子よ早く学校に行け(田島 聖大)

別荘のやう墓を買ふまたいつか揃うて波を聞かうと父は(太田宣子)


(佳作集作品)

大小のメトロノームを宿す母ひとつは胸にひとつは腹に(閏曜日)

出来の悪い弟を見るような目でオレを見ている我が家の駄犬(山本左足)

ダラダラとテレビばっかり見てる子の別の顔知る個人面談(相田美奈子)

引き抜けばよけいな傘も連れてくる傘も子どもが欲しいのだらう(飯田彩乃)

いらずんば!いらずんば!だけ繰り返す正しい小学五年生男子(福島多喜)

コビトカバと目が合い泣いたおとうとの話で今年もまた盛り上がる(ユキノ進)

ひとりでも恋人つなぎでも鳴ってファミリーマートのチャイムはやさし(有村桔梗)

老人が死にゆく過程のいくつかを端折って行ってしまったじいちゃん(瀧音幸司)

「娘さんをください」と言うこの馬鹿も「娘はやらん」と言う側になる(木下龍也)

肉親の肉ってたぶんふくらはぎ畳に四尾ならんだししゃも(山田水玉)

居酒屋の席のいちばん隅っこの区画に収まっている鈴木家(鈴木加成太)

もしもしと留学中の弟がハローハローとうちのみんなが(のの)

イオンしか娯楽と呼べるもののない街であなたと老いていきます(里見てふ)

鶏肉と卵で作るどんぶりを食べて親子で幸せになる(北城椿貴)

括弧がけして解く計算式の如く わたしを媒介して似る夫婦(あのん榎葉)

アルバムの中の母には父でない男と浜辺にいた夏がある(鈴木晴香)

いもうとの子どもを抱けば遺伝子の半分くらいまでが愛しい(嶋田さくらこ)

日曜の朝にきみより早く起き静かに静かに卵を混ぜる(門脇篤史)

今は亡き祖父を語らう我が父の月を見上げるその喉仏(春川)

酒臭い夜の電車で父からの敬語ばかりのメールを開く(鎌倉梓)

 *

つかまえた雨つかまえた手を空にひろげて姪は誇らしく咲く(田中ましろ)