2014.05
うたらばvol.10【機械】 30首
(写真作品)

戦争をとめる機械を隠し持つようにまあるい目のまだら猫(朽木 祐)

コンビニの自動扉はなめらかに私を人と認めてくれた(子帆)

春の夜の夢のなかでは虹ばかり作ってしまうねじ製造機(木下龍也)

ぼくんちがあったところに休日は昼になっても寝ている重機(河野 麻沙希)

iPod touchにきみの声入れてさくら前線追いかけにゆく(三鳥)

冷蔵庫みな卵棚を内蔵し鳥なのよって声をそろえる(高松紗都子)

銘々のスマートフォンはあまたなる指紋によって囲まれて、夕(閏曜日)

ひまわりは気象衛星 愛してる人の位置など把握できない(あみー)

夕焼けに機械の音は軋みつつ港湾都市の末期のひかり(鈴木加成太)

踏切がなかったとして私達何を合図にほどけるのだろう(山田水玉)


(佳作集作品)

自己管理能力として死を選ぶような社会が近づいてくる(六条くるる)

部屋中の時計をこわしているぼくに届く とおいとおい海鳴り(桔梗)

人形は踊りつづけて日曜日すこしわらって土に還った(球体)

新しい機械を生産するために互いの指に填め合うナット(龍翔)

ふたりぶんおでことおでこ合わせたら体温計より正確なのよ(七海ちはや)

取説をはじめてひらく君のいない冬にテレビが壊れたせいで(香村かな)

日に一度自動でずれを直す機能持たぬ僕らに血が通う理由(織方)

この単二電池できっと稼働する家とか月もあっただろうに(藤本玲未)

卵だけ割りつづけている機械あり キューピーマヨネーズ工場(月下 桜)

手のひらを重ね合うより洗濯機で服が絡み合うことの喜び(佐倉まり子)

省エネのため嫌いにはなりません左右のえくぼを等しく刻む(リオ)

天体や季節をまわす歯車と同じ仕組みで動いてる君(鈴木帽子)

ちょうどよく冷房の効く特急で電光の字が告げる夏です(牛隆佑)

心まで補正できればいいのにね少し離れてプリクラを撮る(姉野もね)

白黒の八ミリフィルム回すたび春色に咲く祖父の初恋(氷吹けい)

計器など持たずに鳥は熱心に熱心に海に境界をひく(とびやま)

人間が滅んだ後もしばらくは何かを規制する信号機(木下龍也)

知らぬ間に喋る家電が増えていて母と会話が成立してる(苗くろ)

潮風に関節を軋ませながら海辺の町に眠る起重機(山本左足)

冷蔵庫 ひとりと一台よりそって るすばんしてたら氷ができた(赤埜よなか)

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うつくしい遊びだったね初夏のペダルを踏めば風が生まれる(田中ましろ)