2013.01
うたらばvol.07【鍵】 30首
(写真作品)

春の午後をひたひた眠る妹にいくつか鍵をかけて出かける(飯田彩乃)

街じゅうの横断歩道を鍵盤にかえて少年少女は弾む(岡村拓也)

あたたかいストールの下で手をつなぐ テレビに映らぬ手錠のように(倉野いち)

カチリって音はしたから誰かには聞こえたはずのやわらかな拒否(まひろ)

ずっとずっとひとりだったときみが言うその手に鍵の匂いをさせて(辻聡之)

困ってよ君がいないとNumlock解除も出来ぬぼくなんだって(田村わごむ)

躊躇わず奥まで入れる予め合うと決まっているものならば(蜂谷駄々)

鍵はもう底に沈んで水面を眺めるひとはみなたずねびと(山田水玉)

その鍵じゃ開かないよって言えなくて誰かの鍵を試されている(都季)

催眠のごとくちひさく鍵揺れてふくらみの方に目がいきたがる(太田宣子)


(佳作集作品)

鍵閉める音までやさしく出てゆけばもう戻らないひとを待つ春(太田宣子)

たてのかぎ 「彼の気持ち」が2マスじゃないからいっそ解けなくていい(田村わごむ)

昭和からブリキの缶の中にいて役にたたない鍵があなただ(壬生キヨム)

旅に出たい遠くに行きたいなんて君、鍵を六つも持ってよく言う(牛隆佑)

あの部屋に入るためにはあの人の網膜がいるちょっと借りよう(木下龍也)

合鍵を壊すみたいにがりがりとあなた好みの爪を削った(ショージサキ)

鍵穴をのぞきこむよな瞳して わたしを許可なく見透かす子猫(江倉しおり)

センサー式玄関灯に照らされて鍵より先に見つかる孤独(小山田吹雪)

おんぷみなうすいあおからこいあおでどどどどどどとかいてあるあさ(いらくさ)

僕たちを守ってくれるふりをして悪に手を貸す無垢な鍵穴(六条くるる)

合鍵の意味はわからぬふりをした待つことにまだ慣れたくはない(蜂谷駄々)

稲妻のように昨日に打たれてはさわってしまう鍵のぎざぎざ(むしたけ)

次の子に直接渡してあげようかそしたら手間も省けるでしょう(藤野唯)

間違ったほうに回して永遠に抜けなくなってしまえばいいよ(さとう まめ)

ひんやりと掌のなかにある自転車の鍵にはじまる自由の日々は(紗都子)

開けられない鍵がこの世に一つもない天才鍵師のひそかな憂鬱(瀧音幸司)

さよならに続く道だと知りながら開くしかない扉もあった(山本左足)

合鍵を作っちゃったと言ってみるうまく開くか確かめてみる(松岡七生)

この鍵に合う部屋はもうないけれど何年経っても私の街だ(はる)

 *

キーレスのドア遠すぎて開かない君を見るとき わたしがひらく(田中ましろ)