2012.09
うたらばvol.06【入道雲】 30首
(写真作品)

「ゴリラ雲!」「超ゴリラ雲!」走りだす少女らの髪のプールのにおい(リオ)

うつむけばのしかかる空に首すじをきしませながら蟻を見ている(紗都子)

海沿いの国道をゆくトラックの荷台に積み上がる白い雲(飯田彩乃)

くちづけの助走にすぎない夏だった君の睫毛は偽物だった(こゆり)

夏いちばんまぶしい雲を指さそう 注意書きまみれの公園で(とびやま)

世界中の夏から夏を追い誰の麦わら帽子を探しているの(ゆいこ)

はがれそう、はがれそう、いま鳥たちが入道雲を縫いつけている(小川千世)

潮風が雲になるからこの町の雨は涙と似た味がする(山本左足)

日焼けした背中に泡で雲を描く 夏の終わりの絵日記として(天国ななお)

気化をした言葉はどこにゆくのだろう 積乱雲に向かう坂道(蜜柑)


(佳作集作品)

風鈴の舌を切り取る 何回も小さな嘘をついた罰です(龍翔)

空と海ふれあうところに雲をおく さみしいひとの白い筆先(潤)

ふきだしが入道雲になるくらい君のことだけ考えている(山本左足)

重力に勝てない夏の午后もある俺の代わりに立ち上がれ雲(ユキノ進)

気にしたら負けと知ってはいるけれど晴天はきみだけを照らすね(葛山葛粉)

甘やかし上手なクジラが隠れてる雲のあたりが夏の天辺(太田宣子)

いまここが世界のすべてのびあがりのびあがりゆく真夏の雲の(むしたけ)

真っ黒なこどもらをより光らせるために入道雲白くなれ(じゃこ)

限りなく育つ雲へと桟橋はやさしい腕を差し伸べたまま(飯田彩乃)

今日もまた完成しない雲の絵よ有りったけ出す歯磨きチューブ(いらくさ)

ビーサンの脱げかけたまま笑い声あげて入道雲まで走れ(小林ちい)

夏空に思うことなど今はなく記憶の私はいつも制服(工藤琴子)

天空の城みたいだと君が言いうんちみたいと言えなくなった(森山あすか)

街からも入道雲が見えたこと君にもう一度電話がしたい(須田まどか)

青空にソフトクリームぶちまけてなんて平和な夏なんだろう(木下龍也)

プルトップ浜辺であけた瞬間の記憶にいつもその雲はある(氷吹けい)

どこからが積乱雲かわからずに二人見上げていたすごい雲(瀧音幸司)

なんでもない人になるなと先生は言った入道雲を背にして(蜂谷ダダ)

「幸せにする」と言ったり、雲の名をググってみたり、忙しい人(嵯野みどりは)

 *

特別な場所なんてないびしょぬれでふたり駆けゆく家までの坂(田中ましろ)