2012.06
うたらばvol.05【想い人】 29首
(写真作品)

少しだけ波立たせたい君の背のなんの迷いもない僧帽筋(紗都子)

イヤホンを分け合うふたり探してたエンドロールに似合う音楽(木下龍也)

シャンパンの栓が飛んでる間くらいちょっとは強く手を握ってよ(ユキノ進)

ジャスミンと呼ぶことにする まずきみのフルネームから忘れるために(ムラサキセロリ)

信号機に恋をしているかもしれぬ電柱のもと来ぬ君を待つ(Tetsu)

ノーメイク、セルフカットの君だけど裏地のボアのにおいは女(岡野大嗣)

ガラス越しに眺めていたい(恋人よ)わたしの指紋は汚れすぎてる(飯田彩乃)

華奢だって思ってくれてありがとう意地でも通します薬指(久哲)

まばたきのあいだに蝶はいなくなり代わりにぼくの呼吸を飛ばす(黒木うめ)

ふたりして冬の廊下にいたこともあったね 窓に銀河を作り(むしたけ)


(佳作集作品)

ため息も美しくなれ 魚さえあなたの前じゃ咲こうとしてる(とびやま)

丘に来て君を想えば夕闇の街のすべてに胸騒ぎする(むしたけ)

なんとなく思いだすたびキラキラのふちどり付きで現れるひと(沙羅)

あたためる役目を代わろう母の手を包んで歩くわたしの番だね(水川史生)

都合良く美化していくのが怖いから滴るくらいの傷をください(都季)

ミサイルの発射スイッチ押すように送信ボタンを叩く毎日(飯田彩乃)

二度寝する君がふとんの中で聴く生活音の一部になりたい(蜜柑)

すれちがうときには首をこわばらせ わかりあったりしないどうぶつ(野比益多)

好きだけじゃどうにもならないことがある(僕にはYの遺伝子が無い)(龍翔)

わたししかゐない世界に閉ぢ込めてふつりと消える愛のやり方(太田宣子)

つりかわを全部さわって先頭のきみに会えたら 吉祥寺駅(玉村 一)

会うたびに喉をすべってゆく熱を言葉にすれば春になりそう(氷吹けい)

幸せを願うだけなら恋人じゃなくてもいいね 気づかなかった(篠原謙斗)

いいこだねお面を嫌がらないんだね 頭を撫でればざわめく犬歯(こいけみふゆ)

散りぎわの桜のようにさよならを堪えています一番ホーム(寺菴しずか)

胎内に芽生え始めてからずっと女は命引きずっている(たむぼりん)

ある人がある人を想い硝子窓に電燈ひとつまたひとつ点く(牛隆佑)

貸したきり返ってこない1冊でつながっている気になっている(ちしゃ)

瞬間はあなたに見えて結局は膝を見つめる各駅停車(飯田和馬)

 *

無邪気さは武器なんだろう跳ねまわる君そのままに満天星(田中ましろ)