2011.11
うたらばvol.04【みのり】 27首
(写真作品)

きみの言うすべてがいつか実をつけてなおにぎやかな東京だろう(むしたけ)

来年は三人で訪れるために手を振ればまた揺れる金色(氷吹けい)

ベリージャム紅茶にとけてゆく午後にゆうべの君がもう懐かしい(大平千賀)

マンションの裏庭に咲く退屈に ふたりが投げた種もいくつか(とびやま)

一年中バナナが並ぶこの国で手に入らないあなたの小指(こゆり)

ドングリが音符になりたがっているなんて理由で君を呼びたい(嶋田さくらこ)

ここもまた恋のけものの森らしいモンブラン買ふ深夜のローソン(太田宣子)

熱のない君の手で割りひらかれる無花果 いっそこわしてほしい(葉山なぎ)

模倣です紅いフェイクの林檎ですきみが愛した東京なんて(たえなかすず)

この国の豊年祝う秋祭りあなたの代わりはどこにもいない(螢子)


(佳作集作品)

失えば遠くに実る恋がある 桃には白い緩衝材を(大平千賀)

日本の産毛が過敏になっていく青い蜜柑のならぶ季節は(飯田和馬)

桃色の桃のやわかい胎内に大きな種子が育つ不純(ユキノ進)

育ちゆく麦のごとくに少女らはみるみる金に輝いてゆく(たむぼりん)

スーパーに梨がならんでいっせいに夏をおわらせようとしている(逢)

あかき実をひとつまたひとつほほばりてやさしいだけのきみをわすれる(太田宣子)

結ばれるはずが無かった二人にも金色銀色降らせてよ秋(嶋田さくらこ)

それはもうたわわに実り人々の恨み漂う銀杏の並木(楠木めいこ)

もう二度と見れない涙を舐めてみる種のできないぶどうの味だ(嵯野みどりは)

この胸にあふれるものが色づいてかたちを成せば秋の草の実(紗都子)

みのり無い話の方が好きだった君の声さえ此処にあるなら(松原)

一生の中で一番美しい瞬間のまま真っ赤なりんご(じゃこ)

「さくらんぼ送るからね」の次に出る母の小さくなかった期待(天鈿女聖)

ウイリアム・テルは貴方だ この胸の林檎を正しく射抜いてほしい(龍翔)

ただ一つ残った果実の種も噛み「ごちそうさま」を「さよなら」にする(水川史生)

守られて育ったんだねきれいだねビニールハウスの君は薄味(野比益多)

水田はこんじきのゆめ ぼくたちはそのこんじきの音をきくゆめ(むしたけ)
 *

掬われてなお艶やかなパンプキンポタージュ落ちて君を待つ夜(田中ましろ)