2010.11
うたらばvol.01【夕刻】 29首
(写真作品)

夕ばえにだけうまくいく作戦があると聞かせて握る手のひら(むしたけ)

乗りなれた助手席にいて命まで君にゆだねるやさしい日暮れ(紗都子)

シーグラス何度夕陽を浴びたのか傷つくことをわすれたように(文月郁葉)

終わりなど告げずに沈む曇天の太陽みたいなやさしさだった(野比益多)

何匹の鬼転げ出る夕暮れのコスモス畑揺らして呼べば(いらくさ)

夕焼けに伸びていく影 いつの日か大人になるのは知っていたけど(都季)

悲しみを捨てにくるとうこの海に沈む夕陽はすこし大きい(幾代)

潜水夫は装備を脱いで夕暮れの眠りの底へ沈んでいった(徳毛圭太)

さよなら夢の鯨が群青を泳ぐ 明日も良い日でありますように(ヒラタ)

黄昏のひかりに包まれ歩いてた どんどん出逢って忘れてゆこう(鳥海牧子)

(佳作集作品)

音もなく生まれた秋と交差するようにカラスが咽ぶ「あいたい」(こゆり)

取り返しつかぬ夕暮こわれゆくそれでもきみは恋するんだね(たえなかすず)

黄昏に気配濃くなる月のようにほのかに浮かぶ君の輪郭(紗都子)

夕暮れの川の水面に影落とす私を通り過ぎるのは誰(飯田和馬)

境界を保ったままで夕闇に溶けゆく影は重ならずいる(中森つん)

夕暮れのベランダに立ち発つ鳥を見送る君の小さなお尻(とびやま)

どこまでもあなたの影はまっすぐで そういうところが大好きだった(龍翔)

竹富の火の見やぐらの夕刻をあの娘とあの娘の彼氏にゆずる(空音)

一日中あの橙が続いたらきっとそれぞれ死んじゃうだろう(さかいたつろう)

夕凪のなかくしゅくしゅと確かめるおまえの髪がおぼえる夏を(むしたけ)

夕暮れはこのさびしさと一緒です。赤く滲んで、色濃くなって。(川瀬のみ)

茜さす空を見上げて僕たちは影絵のように一つになろう(纏亭写楽)

懐かしく話せるようになった二度目の失恋に気付く夕刻(佐倉さき)

めらめらと妖しく燃える夕焼けを狂ったように飛ぶカモメたち(いとうゆみ)

9月2日 真っ赤に染まる空の下 きょうもあなたが大好きでした(yako)

陽が落ちる音に合わせたステップで二人の距離が縮まっていく(わだたかし)

くちびるが離れたとたん連れてくる せつなさぷららにじむ夕焼け(うらら花)

影が伸びてもあなたとの身長差 縮まらなくてもどかしかった(yukiduki_skr)

夕闇のせまる縁側端居する二人にそそぐ蜩の声(螢子)

 *

どちらかが悪いわけではないのだと頬はひとしく緋色に染まる(田中ましろ)